検認したのに…自筆証書遺言の有効性
自筆証書遺言の検認をしてもらったものの、その後遺言書に有効性が認められなかった事案をご紹介します。
1.自筆証書遺言と検認
自筆証書遺言(民法968条)とは、その名の通り、遺言者の自筆で書かれた遺言書です。
被相続人の死亡後、遺言書を見つけた者や遺言書の保管者は、開封せず、すぐに裁判所へ遺言書の「検認」(民法1004条)をしてもらわなければなりません。
2.検認
裁判所のホームページによれば、検認とは「相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして,遺言書の偽造・変造を防止するための手続」とされています。
つまり、遺言書の有効・無効についての判断ではない!ということです。
いうならば存在についてのみ確定された、というような状態です。
3.事案
ご依頼いただいた事案では、お客様から「遺言書を発見した」との連絡を受け、すぐに裁判所へ検認手続きをしていただきました。1か月くらいで検認が完了し、遺言書の現物を受け取った(ここで私たちも初めて現物を見ました)ところ…
押印がない!
自筆証書遺言は、①遺言者が全て手書きで書くこと、②日付・氏名の記載、③押印(認印可)の3点が揃っていなければ、無効です。
本件の遺言書は、押印がないため、検認したものの、遺言書としての意味をなさないただのメモ書きだと判明しました…。
検認で裁判所は有効性の判断まではしないということを、痛感した瞬間でした。
遺言書が無効なので、相続手続きはふりだしに戻り…相続人間で遺産分割協議が必要となってしまいました。