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債権者保護手続とは~組織再編を行うための期間~

合併・会社分割などの組織再編や資本金の減少などを行う際には債権者保護手続きを行う必要があります。この手続きを有効に行うためには十分な期間を設ける必要があり、有効な期間が経過していなければ効力発生予定日に有効に効力が発生しない可能性もあります。今回はその期間の注意点などについて解説いたします。(文責:竹下)

目次

  1. 債権者保護手続とは
  2. 債権者保護手続の期間
  3. 知れている債権者への各別の催告の省略
  4. 官報公告について
  5. まとめ

1.債権者保護手続とは

 合併・会社分割・資本金の減少などを行う際はその会社の債権者に対し一定の期間内に(1か月以上)異議を述べることができる旨を官報に公告し、かつ知れている債権者には、各別にこれを催告しなければなりません。(会社法449条2項、799条2項など)

 合併などを行う際にその債権者に対して異議を述べる期間を与え、債権者の保護を図るための制度となっています。合併の場合、基本的には消滅会社・存続会社の両方で行う必要があります。

 この債権者保護手続において必要とされているのは「公告」及び「催告」で、基本的には官報での公告と、知れている債権者へ個別の通知を行います。

 この債権者保護手続を行わなければ合併・会社分割・資本金の減少などの効力を有効に発生させることができません。

2.債権者保護手続の期間

 ここで重要なのは、債権者が異議を述べることができる一定の期間を設ける必要があるということです。そしてその期間が「1か月以上」となっております。

 つまり合併・会社分割・資本金の減少などを行う場合にはすぐに書類を整えたとしても即座に実行できるわけではないということです。

 官報の公告を行うに当たっては、官報公告の申し込みをしてから現実に官報に掲載されるまでにも時間を要します(申込~掲載まで2週間前後)。そのためスケジュールと段取りが非常に重要となります。

 我々が合併などの登記手続きの相談を受けた際にもまず初めに気にすることはそのスケジュールになります。計画されている効力発生日に対して相談を受けた時から逆算してスケジュールを組みます。

 例え債権者が1人もいない場合においても個別の催告の必要はなくとも公告手続きは省略することができません。

 最短日程をとり、登記申請をしようとしても官報の掲載日から効力発生日までは1か月以上の期間がないと登記の申請を行うことができないのです。

 

 3.知れている債権者への各別の催告の省略

 債権者保護手続の公告は、官報公告のほか、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙又は電子公告によりしたときは知れている債権者への各別の催告を省略することができます(会社法789条3項など)。

 この省略を行うには会社定款において広告の方法が日刊新聞又は電子公告にて行うと定められている場合に限られます。

 債権者が多数に上るような会社であればこの方法によることが多いですが、会社定款上の公告の方法が官報と定められており債権者への個別の通知が可能な場合は公告を官報に掲載をする場合も多くあります。

 4.官報公告について

 実際に官報に公告を掲載する場合にはどのような内容を掲載するのでしょうか。合併の場合を例にとると次の事項となります。

  1. 吸収合併をする旨
  2. 吸収合併存続株式会社滅会社及び吸収合併消滅株式会社の商号及び住所
  3. 計算書類に関する事項
  4. 一定の期間内(1か月を下ることができない。)に異議を述べることができる旨

 3の計算書類に関する事項とは、最終貸借対照表の要旨を掲載した決算公告をしている会社の場合は、その掲載されている場所を特定できる事項(掲載されている官報の掲載日付・ページなど)です。決算公告をまだ行っていない場合は、合併広告と同時に貸借対照表の要旨を掲載することもできます。

 なお、合名会社、合資会社、合同会社及び有限会社には決算公告の義務がありませんので合併公告の際にもその必要がありません。

 内容自体は難しいことはあまりないですが、記載内容に不備がある場合、合併の無効原因になりかねません。そのため弊社ではスケジュール管理と公告すべき内容の判断、原稿の確認など官報の掲載申込からお手続きのサポートを行っております。

 

5.まとめ

 債権者保護手続は組織再編等の際の重要な手続きであり、特に公告については1か月以上という期間が必要なため、そのスケジューリングと内容の判断はシビアになり得ます。そのため組織再編等の手続を行う場合は効力発生日の少なくとも2カ月程前から計画をする必要があります。合併や会社分割などの計画がございましたら是非弊社へご相談ください。

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