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株式会社のみなし解散制度~知らない間に会社が解散している?~

会社に変更があった場合にはその都度登記申請をする義務があります。この登記申請を怠ると、「知らない間に会社が解散している!」という事があり得ます。今回はそんな「みなし解散」についての説明と対処法についてまとめました。(文責:竹下)

目次

  1. みなし解散とは
  2. なぜ、みなし解散となるのか
  3. みなし解散の対象となった場合の対処法
  4. みなし解散の登記がされた後の対処法
  5. まとめ

1.みなし解散とは

「会社法第472条第1項の規定による解散」いわゆる「みなし解散」とは、株式会社において最後の登記があった日から12年を経過した場合に一定の手続きを経て、なお会社が対応をしない場合に解散したものみなされる。というものです(会社法472条1項)。

つまり12年の間、全く登記申請がされていない会社は、解散したものみなされてしまうわけです。

とはいえ、全く知らない間に会社が解散されるわけではなく、一定の手続きが行われます。

①法務大臣が官報にて公告。みなし解散の処理が行われることを官報に掲載して予告をします。                                            ②管轄法務局から、みなし解散対象会社の本店へとその旨の通知がされます(会社法472条2項)。  ③会社が一定の対応(後述)をとらない場合は、官報公告の掲載の日から2か月の期間が満了したときに解散されたものとみなされます。

解散されたものとみなされた会社においては職権により解散した旨の登記がされてしまいます。

この解散の登記がされた後は代表者事項証明書、印鑑証明書等が発行されません。

さらにこれらの証明書が発行されなくなるだけでなく、解散した会社は原則清算会社となり清算の目的の範囲内でのみ権利義務を有することとなります(会社法476条)。

つまり通常の営業活動ができないということになります。

官報の公告と会社に対する通知以外では知らないところで進んでいくので、もしその通知を見逃していたりすれば気づかないうちにみなし解散がされている、なんていうこともあり得るというわけです。

ちなみに、令和5年では2万7887社、これまでの合計で約71万社(第1回(昭和49年)~第15回(令和5年))がみなし解散の登記がされています。(法務省HPより)

件数から見ても、この制度に該当することが珍しいこととは全く言えません。

それではこのみなし解散を防ぐにはどのようにしたら良いのでしょうか。

2.なぜ、みなし解散となるのか

まず、前提としてなぜ12年間、登記がされていない場合に解散とみなされてしまうのかから解説をいたします。

株式会社において会社に変更があった場合には登記申請をする義務があります。

ex)会社の商号、本店住所、事業目的、役員の変更など

そしてこの中で必ず登記の必要性が出てくるものとして、取締役の変更登記があります。現在の会社法上において取締役の最長任期は10年です(会社法332条)。

任期が満了した場合、同じ取締役が続ける場合でも重任の登記を行う必要があります。このため、株式会社設立の時(又は最後の重任登記)から10年以上何も登記がされないということは、少なくともされるはずの役員の登記がされずに放置されているということになります。(登記申請を怠ると登記懈怠といって過料が科されます。)

また、実際に事業を廃止して会社を畳む場合にも会社の解散の登記が必要となります。

そのため、長期間登記がされていない株式会社については、既に事業を廃止し、実体がない状態となっている可能性が高く、このような休眠状態の株式会社の登記をそのままにしておくと、商業登記制度に対する国民の信頼が損なわれることになります。

こういった放置された会社をそのままにしておかないためにみなし解散という制度が存在します。

3.みなし解散の対象となった場合の対処法

1つ目は、みなし解散の対象会社となってから、解散の登記がされてしまうまでの間(官報公告の日から2か月以内)に何らかの登記申請を行うというものです。登記の申請がされればみなし解散の対象会社からは外れるため解散の登記がされることを防ぐことができます。

2つ目は、前述のみなし解散の対象となった通知と一緒になっている、事業を廃止していないことの届出書を届け出ることによってみなし解散を防ぐことができます。

ただ、この事業を廃止していないことの届出をしたところで12年間登記がされていないという状態には変わりないので、1年後にまたみなし解散の対象会社となってしまいます。

そのため、会社の事業を継続している場合には懈怠していた登記を行う必要があります。多くの場合は、取締役の重任登記を行う、ということになるかと思います。

4.みなし解散の登記がされた後の対処法

先程の対処法はみなし解散の対象会社となり、官報公告から2か月以内に限っての話となります。みなし解散になったことに気づかず解散の登記がされてしまった後はどうすれば良いのでしょうか。

このみなし解散の登記がされた会社は、みなし解散登記がなされた日から3年以内に、株主総会で会社を継続する旨の決議をすることにより、株式会社を継続することができます(会社法473条)。

そして、この会社の継続を登記申請すれば一旦された解散の登記は抹消されることとなり、会社の事業を続けることができます。

ただし、前述の登記申請を懈怠していた取締役の重任登記や会社の継続登記を申請したときには登記懈怠等として100万円以下の過料を科される可能性が非常に高くなりますので注意をしてください。

5.まとめ

みなし解散とはどういった制度か。みなし解散の対象会社になった場合、みなし解散の登記がすでにされてしまった場合にはどうすれば良いのかについてを簡単に説明しました。

みなし解散の場合に限らず、するべき登記ができていない場合には過料を支払わないといけなくなるケースがほとんどですので、一番の防止策は正しい登記を正しい期間内に行うことになります。状況や経過期間によって具体的対応は変わりますのでもしご不安があれば一度弊社までご相談下さい。

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