商業登記担当のメモ帳「役員任期と登記義務」

会社の役員には任期が存在します。その任期が満了を迎えると原則役員を退任することになります。そして役員の退任・就任・重任などは登記の義務があり、これを怠ると過料に処される場合があります。今回はその役員の任期についてご説明をします。(文責:竹下)
目次
- 役員の任期とは
- 任期のルール
- 登記義務
- 登記懈怠を防ぐには
- まとめ
1.役員の任期とは
まず、会社の役員とは何か、というところから簡単にご説明します。一般的に役員と聞くと「取締役」が頭に浮かぶことかと思います。
会社法では取締役、会計参与、監査役を役員とされています。(会社法329条)これらの役員は業務執行や経営方針の決定、監督などを行う重要な立場の役職です。
これらの役職についている人は会社の法人登記簿に名前が載っており、就任や退任、重任(従前役員だった人が任期満了を迎え再度就任すること)をした場合にはこれを登記することが義務とされています。(会社法915条)
なお、役員以外にも会計監査人などについても登記義務がありますので変更等があった場合は登記をする必要があります。
2.任期のルール
役員にはそれぞれ任期が決まっています。(会社法332条ほか)
取締役 2年 (非公開会社では最長10年)
監査役 4年 (非公開会社では最長10年)
会計参与 2年 (非公開会社では最長10年)
※非公開会社とはすべての株式の譲渡に制限を設けている会社のことを言います。いわゆる上場会社は原則公開会社となります。
原則この任期が満了を迎えると退任ということになります。その際は役員を継続する場合でも株主総会で選任の決議をして登記を行う必要があります。
そして、非公開会社だからと言ってすべての会社の任期が10年というわけではありません。それぞれ会社の定款で役員の任期は定められています。そのため、役員の任期は定款を確認しなければ分かりません。もし非公開会社であっても任期を2年と定めていれば2年ごとに何かしらの登記が必要になります。
もちろん、会社の定款は所定の手続きを踏めば変更が可能なため、任期の変更を行うこともできます。
3.登記義務
既に述べておりますが、役員に変更があった場合、役員に重任があった場合にはその旨の登記が必要となります。
原則、その変更があった時から2週間以内に登記の申請を行う必要があります。(会社法915条)
この期間を過ぎてしまうと登記懈怠又は選任懈怠となり過料に処されてしまう可能性があります。(会社法976条)
2週間を過ぎたからと言って必ず過料に処されるわけではありませんが長期間放置しているとそのリスクがあることは間違いがありません。
4.登記懈怠を防ぐには
それでは登記懈怠を防ぐにはどうしたら良いでしょうか。
まずは自社の役員任期を正確に把握することが必要です。会社定款の取締役、監査役の任期に関する規定がある場合にはその任期に従います。(法令に違反している場合は法令に従った任期となります)
次に会社の登記簿を確認する必要があります。会社登記簿には就任日や重任日の年月日が記載されているのでその日付から計算して任期満了日を把握します。
なお、この任期の計算には、定款に別段の定めがある、事業年度を変更している等その他の要素が絡む場合が多くあります。(詳しくはご相談ください)
役員の改選が必要な場合は、株主総会を開催し役員の選任決議を行いその議事録を作成して登記申請をします。
5.まとめ
登記をすることは法令に定められている義務になります。放置していると過料を処される場合もあるので注意が必要です。まずは任期と登記簿の確認を行って必要があればその対応を要します。
定款・登記簿の確認とその登記申請手続きまで弊社にてサポートを行っておりますので不安・心配があればぜひご相談下さい。